「そしたらー…これにしないっ?」
そう言うと、
私の後ろにある陳列棚に手を伸ばし、大きなサイズのプリンを手に取った。
「えっ!?これはいくら何でも…」
「俺も食べるから。」
「……?」
「俺も一緒に食べるから。このサイズのほうがいいんじゃない?」
言葉の意味が理解出来ずに戸惑う私なんかお構い無しに、
彼はレジへとすたすたと歩く。
暫くぼーっと背中を見つめ、
ふと我に返り彼に走り寄った。
その間に彼はプリンを買っていて、
「あ、スプーン2つください」と陽気に答える。
「ちょっと!倉田さん…」
「あの、そちらは。」
無愛想な店員は、
私の手の内のプリンを指差す。
「これは、返します。」
倉田瑞季は私の手からプリンを取り上げると、
元あった場所へと戻した。
「じゃあ、行こっか。」
まるで、自分の家に帰るかのように
私の家路へと足を向けた。