「お待たせしました。」
店内には彼しかいなかったので、席まで運ぶことにした。
「ありがとうございます。」
彼はそう言うなり、
さっきまで被っていた
ニット帽を外した。
綺麗な、顔。
そう、
かっこいいと言うよりか、綺麗。
まさに美男子という言葉が合う。
もしかしたら芸能人かな?
でも、テレビじゃ見たことないし……
あっ、俳優の卵とか?
程よく染まった茶色の髪が、
彼の綺麗さを余計引き立たせていた。
「あのっ……」
男性が突然口を開き、
壁を指差した。
「あれは、あなたのですか?」
指の先を見つめると、
そこにはギターのハードケースが1つ。
「ああ、あれは、店長のです。」
「店長さんの?」
「はい。あっ、実はここ、夜になるとコーヒーショップから、バーになるんです。
時々演奏したりするんですよ。」