そう言われて、
胸が苦しくなった。


「でも…まだ会って間もないのにそんなのおかしい…


「おかしくねーよ。」


「えっ?」


「人を好きになるなんてさ、実はすげぇ些細なことがきっかけなんだよ。
時間なんて、人それぞれだ。
長い時間かけても好きにならないときはならないし、
ほんの数日で好きになるときは、なる。



時間なんて気にしてたら、
好きなんて気持ち、無くなっちまうよ。」


店長は、食器を拭く手を止め、
遠くを見た。



「その時の気持ちを、すぐ歌詞に書き留めるように、
好きになったなら、胸に書き留めろ。
そんで歌うように伝えろ、な?」


思いがけない店長の言葉に、
横顔をじっと見つめた。


店長はしばらく遠くを見ていたけれど、


「…何か言えよ。恥ずかしいだろが。」



と向き直って、頭を掻いた。


なんだか可笑しくなって、
はにかんでしまう。



でも店長に言われて、
胸の中の不安の渦が


少し晴れた気がした。