最初は、空耳かと思い
一瞬止めた手を進めた。
だけど、
「あの…忙しい中、すみません。」
さっきよりも近づいた声に、
柔らかく響く、その声に、
ゆっくりと振り向いた。
「あのっ、今の時間て、お店開いてないんですか?」
「えっ?」
「表見たら、人誰もいなくて…」
その声の主は、
ニット帽を深く被っているからよくわからない。
けど、
覗く鼻は、すっと細く高く、
唇は、綺麗なピンク色してて
長身の、細身の男性だった。
「あっ、すみません。お店ならやってますよ。
たぶん、店長がテレビ局のほうに配達行っちゃってて…
私も、倉庫にいたから。」
そう説明すると、
男性は安心したように、
「そうだったんですね。良かった。」
笑った。
ニット帽を少し上げて。