「…大丈夫…?」


「うん。これは返さなくて、大丈夫。」


「………ええっ?!」


拍子抜けする言葉に、
思いの外大きな声を出してしまった。



「でも、でも、今日はこれを返すために…


「ううん。違うんだ。」


「…えっ?」


「違うんだ。ただ、俺が君に会いたかっただけ。
あのコーヒーショップだと、周りに人がいて、あまり話せないでしょっ?」


少し困ったように笑い、
袋からマフラーを取り出す。


「これは、君が持ってて。」



あの時と同じように、
私の首にマフラーをかける。


「…不思議だ。君といるとね、素直になれる。」


目を細めて、



彼の手が、私の頬に触れた。