あのあと、倉田瑞季はコーヒーを飲みに来てくれた。


でも仕事中だと、
マフラーを渡す機会がなかなか無くて。


すると彼はそんな私の心を見透かしたように、


「土曜日の昼、空いてますか?
よかったら、この前のお礼がしたくて…会えないかな?」



……そして、今に至る。


指定されたのは、
表参道にあるカフェ。


いかにもお洒落な此処は、
私1人じゃなかなか入れない。


いつもより気合い入れた、メイク。


黒のシフォンワンピ。


久々に履いた、ヒールの高いパンプス。


…ああ、どうしよう。


デートだって、
別に初めてな訳じゃないのに。


何を話せばいいのか、全くわからない。


無駄に手汗はかくし……


取り敢えず、深呼吸。



「緊張、してるの?」