「君はさ、プロ目指してるんだろ?」


「…はい。一応。」


「そしたらさ、どこかのオーディション受けたらどうだ?ビジュアルも良いし、良い評価もらえるんじゃ…


「いや、いいんです。」


店長の言葉に被せるように、
彼は言った。


私も店長も、先程までとは違う
尖った口調に、一瞬固まる。


「…あ、すみません。
やっぱり現実問題厳しいから…親にも反対されてて……」


慌てて表情を緩ませ、
苦笑を浮かべた、倉田瑞季。


「なるほどね。そりゃ、すまない。…なんならさ、栗田と同じように、この店で歌わないか?」


「えっ…いいんですか?」


「もちろん。君の空いてる時間で構わないよ。」



「ありがとうございます…!」


彼は本当に嬉しそうに笑い、
頭を下げた。