「あ、えっと…昼間来てくれたお客さんで、バーの話をしたら…


「ぜひ、彼女の声が聞きたくて、来ました。」


カウンターの近くにいた
倉田瑞季は、そう言いながら
ステージへと歩み寄る。



「なーるほどね♪どうだった?
栗田、良い声してるだろ?ギターも上手いんだ。」


「店長、恥ずかしいですよ。」


そんな大袈裟な言い方……



そう言おうとすると、


「はい。予想以上の歌声でした。ほんとに、良かった。」


落としていた視線を、
落ちた瞼を、
彼へと向ける。


倉田瑞季は、
私の目を見て、微笑んだ。



嬉しくて、嬉しくて。
たてえお世辞だとしても、
嬉しくて、


火照った頬を
隠すように手で押さえた。