歌い終わると、
一際大きな拍手が聞こえた。
その先を見つめると…
「あっ……」
漏れた声がマイクに入り、
みんなが私の目の先を向く。
そうすると、
その人は、倉田瑞季は
少し照れたように笑い、
ペコリと会釈をした。
昼間とは違い、
ニット帽は被っていなくて
整えられた茶色の髪に、
黒のジャケットを着こなしている。
まるで、本当に芸能人のよう。
彼の近くにいる女性のお客さんは見惚れて、ボーッとしている。
また他に目をやれば、
「かっこいいね、あの人」
そんな会話が聞こえた。
「栗田、知り合い?」
店長の言葉に、ハッと我に返る。