“無我夢中”


なんて、言葉が浮かんだ。


自分から離れるなんて出来なくて、彼から距離を置かれるのを待った。


でも、倉田瑞季はそんな願いとは裏腹に、
さっきよりも強く抱き締める。


そう、本当に、痛いくらいに。



お互いにやっと離れた唇には、
荒い呼吸が残った。




沈黙。



ああ、このまま本当に時が止まればいいのに。




「……もう…会えないかも…しれない。」


なんて夢は、叶わない。



倉田瑞季は、目を伏せて呟いた。