悲しいくらいに、苦しいくらいに抱き締められる。
息が上手くできない。
それは、たぶん、
悔しいくらい、ドキドキしてるから。
淫らに投げ捨てられた服。
濡れた体に、髪。
倉田瑞季は、バスタオルで私の髪をバサバサと拭いた。
「もうっ、痛いですよ。」
「ごめん、ごめん。」
なんて笑いながら、私との距離を縮めた。
真っ直ぐに、本当に真っ直ぐに私を見つめる瞳。
絡まる、視線。
でも、2人の先に、同じ未来は待ってない…――
そんなことを考えながらも、
引き寄せられ、強引に奪われる唇。
私の髪に、肌に触れる。
なんだかもっと近づきたくて、
彼の首に腕を回す。
また、絡まる視線。
離れた唇。
「………実は……
そう呟いた彼の唇を、
今度は私が奪う。
だって、きっとその先には、
私じゃない、
私ではない人との未来があるから。