「…噂を聞いたんだ。
素晴らしい歌声を持つ、女の子がいると。


確かめたかった。
自分の耳で、目で。
だから、君に会いに行ったんだ。」



驚いて振り向く。


長身の彼は、いつも以上にスラリと高く


綺麗な顔は、悲しげに微笑む。



「私のこと…」


――知ってたんですか?


そう聞くよりも早く、


「噂は、本当だった。
君に会えて、確信した。


あの時の時間は、君との出会いは本当に、忘れられない。」


心なしか揺れる瞳。
そんな彼の瞳に、吸い寄せられそう。



「俺は…君を傷付けた。
本当にどうしようもない男だよ。」


自嘲気味に吐き捨て、
深くため息を吐く。



やや乱れた服に、髪型。


私の知らない彼が、
目の前にいた。