「…仕方…ないですよね。」
私の声に、倉田瑞季は顔を上げる。
まともにぶつかる視線。
相変わらずの綺麗な、顔。
でも、
今日はすごく、暗い。
「倉田さんにだって、お仕事があるし。
それは…生きていく上で、必要なことだし。」
徐々に速まる鼓動。
耳にまで届きそうだ。
落ち着け、自分。
「だから…だから、もう、大丈夫です…」
――何が?
「…もう、諦めますから。」
――ほんとに?
「今なら、まだ…戻れる…」
――こんなこと、言いたいんじゃない。
本当はもっと、
「だから…」
――問いつめたいのに。
「気にしないで…ください。」
―本音が、聞きたかったのに。