一時のピークを過ぎると、
客足が止まる。


店長がテレビ局に出前を届けるために、
1人カウンターに立った。


――最近、ギター弾いてないな…

店の片隅に置かれたギターケースを見てふと感じる、


切なさ、痛み。


今は、歌えない。


思い出すから、


彼を、思い出すから…


緩んできた涙腺に浮かぶ、
彼の笑顔、声。


震える唇を噛みしめ、
ぐっと拳を握った。



そんな時、
店の扉が開く。


「いらっしゃいませ…!」


慌てて上げた顔に、





「こんにちわ。」



彼の、
倉田瑞季の眩しい笑顔が映った。