『その時のシャルル6世の気持ちは当然複雑な心境だっただろう…』


『“大勢の国民の命”と“大切な我が子の運命”を天秤に掛けねばならなかったのだからな。』


『しかし、そんなシャルル6世が死んだ後、天の国から現世を見て、自分亡き後の我が子達を見て、やはりこの条約は“結ぶべきではなかった”と悟ったのだろうな。』


『そして、シャルル6世は我等が偉大なる神との最後の審判で、その事を神に告げたのだ。』


『そして、慈悲深き我等が神は、生前のシャルル6世の功績を認め、その訴えを聞き入れる事になさった。』


『そして、神の出した答えとは、シャルル6世の息子をランスへ連れて行き、戴冠式を受けさせると言うものだ。』


『そうですか。偉大なる神様のご指示なら私は、そのご指示に従います。』


『しかしながら、実際私はこれから自分が、“何をしたらよいのか”“何をすべきなのか”が全く解りません。』


『それなら心配はいらない。お前は、これからヴォークルールの守備隊長“ローベル・ド・ボードリクール”の元へ向かうのだ。』


『そして、今、私から聞いた事を話し、何としてもシャルル7世をランスへ連れて行き、戴冠式を受けさせるのだ。』


『良いな?』


『はい。』


『ヴォークルールの守備隊長…“ローベル・ド・ボードリクール”さん…ですか…』


『あ、あの…その方は、何処にいらっしゃるのですか?』


『それを、教える事は出来ない。』


『何故ですか?』


『私達が神から伝えられた使命は悪までも、お前にシャルル6世の意思、神の御意思を伝える事だからだ。』


『解りました。では、何としてもそのローベル・ド・ボードリクールさんを捜しだし、この出来事を伝えます。』


『健闘を祈る…』


『あ、あと…こちらのジャンヌさんは…』



ジャンヌは俺の方を見ながら、ミカエルに言った。


すると、ミカエルはジャンヌにこう言った。



『その者の事は、私達に任せて貰おう。』


『お前に伝える事はもう無い。頼んだぞジャンヌ・ダルクよ。』


『はい。』