『しかし、そのシャルル6世が天の国で神との対話…つまり“最後の審判”を受けている最中で、“どうしてもやり遂げたい事がある”と神に告げたのだ。』


『“やり遂げたい事”…ですか?』


『それは何ですか?』


『うむ。それは、今お前達が住む国の“王位継承者”つまり“シャルル7世”についての事だ。』


『“シャルル7世様”…ですか?』


『そうだ。お前も知っているだろう?』


『シャルル6世亡き後、今のフランス王位は“王太子”であるシャルル7世では無く“ヘンリー6世”に受け継がれた事を。』


『はい。』


『しかし、お言葉ですが…それは“トロワ条約で定められた事。』


『シャルル6世様が生前、ヘンリー5世様との間で結んだ条約での事…』


『つまり、ヘンリー5世様は勿論の事、シャルル6世様もご承知の上で結ばれた条約の筈…』


『なのに、何故、シャルル6世様は、そんな事をおっしゃったんでしょうか?』

『確かに、“100年戦争”及び“アジャンクールの戦い”を経て、生前のシャルル6世とヘンリー5世との間にフランスの王位継承者に関する条約“トロワ条約”を結んだ。』


『そもそも“トロワ条約”とは…シャルル6世亡き後。』


『シャルル6世の息子であるシャルル7世では無く、シャルル6世の娘“キャサリン”と“ヘンリー5世”が結婚し、子を産み、その子供、つまり“ヘンリー6世”にフランスの新たな王位を継がせると言う物だ。』


『はい。』


『しかし、そのトロワ条約を結んだシャルル6世とて好きでそんな条約を結んだ訳では無い。』


『100年にも渡る争いに終止符を撃つ為、下らない争いの為に命を落とす国民達を思う気持ちが、彼を動かし、シャルル6世は、その条約に同意したのだ。』