俺の目の前のジャンヌは、更に、目を大きく広げ、驚きを表わにした。



『だっ、だって貴方、さっきから自分の事を“俺”って…』


『いけ無ぇのかよ?女が自分の事を“俺”って言っちゃ〜。』


『べ、別に…そうじゃ無いけど…』


『それに…その〜普通、女の子はスカートを履いてると思うんですけど…』


『女はスカートじゃなきゃだめなのか?』


『流石にそれは…“異端者”って言われそうですし…』


『“異端者”?俺がか?』

『女がズボンを履いてるだけでか?』



そう言うと、ジャンヌは、俺の顔から視線を反らした。



そして、俺はこの時今までジャンヌから聞いた全ての言葉を思い出し、考えた。


(俺と同じ名前?…)


(“ジャンヌ・ダルク”?)

(“ユリウス暦”?)


(“1425年”?)


(“異端者”?)


(“大天使ミカエル様”?)

(それに…“カトリーヌ”に“マルグリット”って…)


(おいおい…これってまさか……)



そして、俺は分かりきった事を敢えてジャンヌに聞いてみた。


分かりきっては居るが、敢えて確認の為に…



『な、なぁ?ジャンヌ?』

『もしかして…ここって、“フランス”だったりする?』


『何言ってるんですか?』

『そんなの当たり前じゃないですか。』


『………』



分かりきっていた答えだったが、俺はその答えを聞き、一瞬言葉を失った。


そして、それを悟られない様に、あるいは、俺が俺自身をごまかすかの様に、笑って明るく見せた。



『だっ、だよなぁ〜…ハハァ…』



すると、ジャンヌが、俺に、こんな事を聞いて来た。


『そう言えば、貴方名前は?』


『えお、俺の名前』


『俺の名前も…“ジャンヌ・ダルク”だ…』


『はい?』


『いや、だから…俺の名前も“ジャンヌ・ダルク”って言うんだ』