そして俺は続けてハイドにこう言った。



『俺の親父が昔こんな事を言ってた。』


『“男の強さってのはなぁ、勝ち続ける事を指すのでは無く。”』


『“何度負けても、その度に立ち上がれる事を指す”』


『“何度負けてもその度に立ち上がり続ける事こそが強さなんだ”って』


『確かに負ける事は喜ぶべき事じゃない。でも負ける事は恥ずべき事でも無いんだ』


『負ける事に馴れちゃいけない。』


『負けた事を忘れてもいけない。』


『負けた事を自分の力に変えるんだ』


『そしたらいつか、そいつに勝てる』


『俺は親父の言葉を聞いてそう思ったんだ』


『だからハイド。俺達ももっと強くなろう』


『ああ』



ハイドは自分の頬に伝う涙を拭き、俺にそう言った。


すると、どこからともなく拍手の音が聞こえた。



“パチパチパチパチ”


『ん』


『ん』



俺とハイドがその拍手の音のする方へ顔を向けた。


するとそこには、俺の見覚えの無い長髪の男が一人、立っていた。



『お、お前は』



ハイドがそう言いながら、焦りの顔を見せた。


俺はそのハイドの焦りっぷりを見て、この男が何者なのか瞬時に分かった。



『ハイド…“コイツ”か?』


『ああ…コイツが“ロベール”だ。』


『“ロベール”?』



拍手を止めたその男は、笑顔で俺に話し掛けて来た。


『いゃ、失礼。盗み聞きするつもりは無かったんだが、あまりにも素敵な演説だったもので。つい、聴き入ってしまった。』


『私はヴォークルールの守備隊に属する“ロベール・ド・ボードリクール”だ。』


『君があのロー君だな?君は剣客と言うより、どちらかと言うと将来、神父様の方が向いてると私は思うが?』