俺が完全に困り果てた顔をしながら言葉を失った事に気が付いたらしく、イザベルが優しく俺にこう言った。



『あら、それは、それは、御若いのに苦労してらっしゃるのね?』


『歳はウチのジャンヌと変わらない位なのに、大変ですね。』


『ウチみたいな家で善ければ、私達は大歓迎ですよ』


『いつまででも居てもらって構わないわ』


『ねぇ?ジャック』


『あ、あぁ勿論さ』



もうダメだと思った俺に対し、助け舟を渡してくれるかの様に、イザベルが話しを進めてくれた。


そして、ダルク夫妻は俺を暖かく向かい入れてくれた。


すると今度はジャックが俺やイザベルとジャンヌにこう言った。



『それじゃ、善は急げだすぐ家に帰って新しい家族の歓迎会の仕度をしなきゃな』


『そうね』


イザベルが微笑みながら、ジャックの言葉に相槌を打った。


すると、ジャックが又もや、俺にこう言ってきた。



『ところで、君の事をどっちの名前で呼べば良い?』

『“ジャンヌ”かい?』


『それとも“カトリーヌ”かい?』


『え?…あ、あぁ』



そう聞かれ、少し戸惑った俺をみたイザベルがジャックに小声でこう言った。



『貴方』


『だ、だってよ〜』



すると、優しくイザベルは俺にこう言った。



『貴方の本当の名前は“ジャンヌ・ダルク”さんよね?』


『………』


『大丈夫よ同じ名前だからって貴方が偽名を使ったなんて疑ったり、怪しんだりはしないわ』


『世界はこんなに広いんですもの同じ名前の人なんて大勢居るわ』


『だから余計な気をまわさないで、もっと自分に正直になって』


『“何でも話して”とは言わないわ人に言いたくない事の一つや二つは誰にだって有るものよましてや初対面の人ですからね。』

『だから、隠し事をするなとは言わないわでも“嘘”は付かないで。』


『私は、嘘が嫌いでは無いけど、嘘を付かれる事が悲しいから。』