『それと…遅れましたが、私の名前は“イザベル”ジャンヌの母の“イザベル・ダルク”と言います。娘を助けて頂き、本当にありがとうございました。』


『そして、こっちが夫の“ジャック”』



イザベルが、さっきジャンヌを叱っていた男の方に手を向け、俺に名前を教えてくれた。


すると、イザベルに紹介された男が、改めて自分から俺に名前を名乗って来た。


『“ジャック・ダルク”と言います。この度は、娘を助けて頂き、ありがとうございます。』


『あ、あぁそれは丁寧に、どうももうも。』



俺は、初対面の年上の人から下手に出られる事に慣れていなかったから、かなり戸惑いながらもジャックやイザベルに俺の名前を名乗った。



『俺は“ジャンヌ”“ジャンヌ・ダルク”と言います。』


『え?…“ジャンヌ・ダルク”さん?』


『え……』


(やっべ〜流石に偽名とかの方が善かったかなぁ?)

(流石に、ジャンヌと同じ名前だとなんか胡散臭いなぁ…)



俺は、普通に自分の名前を名乗っただけなのに、何故か慌てて話しをすり替えてしまった。



『あ、あの…この度は貴方方のご家庭に御厄介になりま―』


(ちょっと待て〜ぇ俺はさっきから何言ってんだ)



俺は、自分の言葉が何言ってるのかすら解らなくなるくらいテンパりながらも、心を落ち着かせながら、もう一度、言葉を言い直した。



(落ち着けぇ〜…良いか?ジャンヌ、取り敢えず落ち着いてもう一度最初っから言い直すんだ…)


(フっ〜……)


『え、ええっと…今のは無しで』


『ええっと…名前は…俺の名前は…カッカ、カトリーヌ…』


『そう俺の名前は“カトリーヌ”って言います。』

『訳あって、ヴォークルールの守備隊長、ロベール・ド・ボードリクール氏を捜して遥か遠い国から旅をしていました。』


『そして、たまたま森で盗賊達に襲われていた娘さんを助けて、そんな話しをしたら、娘さんがウチに是非って言って下さったので―』


(ちょっと待て〜やっぱりダメだ落ち着いて話したつもりだけど、話しが目茶苦茶で纏まらない…)


『それで…その〜…』