「見越入道ってね。江戸時代の本だと妖怪の総大将みたいな扱いの人気の妖怪でね。
そんなだからか、見越入道の話は日本全国にあるんだよ」

水を得た魚か、立て板に水、油紙に火が点いた様。
昨日のノンビリっぷりが嘘みたいにペラペラとよく話す。

着物と髪型で雰囲気違うし、もしかして別人じゃないの?

「あ、あの」
「うん?」

五十嵐の良い所は話の途中でも嫌がらずにこっち見てくれるところだな。

「その辺りはこの間聞いたから…
その…
追い払い方の話の続きを…」

うぅ。こう言うとなんだかこの間の話にビビッてるみたいよね…。


「あ、そうだね。えっとねぇ」
五十嵐は気にする様子もなく机の上のノートをめくる。

あ、カンペだ。

口に出してはいないはずなのに、五十嵐はこちらを見て照れながら、
「お祖父さん貸し出してくれなくてね」
そう言い訳した。