長谷川さんはパッと奴の手首を離したが、奴はうずくまってうめいていた。
「長谷川先輩! すみません! そいつ現役部員の友人で」
「ああ。倉沢くんが頭抱えていた部員の。アキノさん、すまないけれど騒がず、倉沢くんと例の彼を呼んできて下さい」
「わかりました」
真剣な声でアキノがきびすを返すと、ゼエゼエいう声が投げられた。
まだ床に転がったままの奴は、ワックスで整えたらしい髪を乱して不気味な声で
酷い言葉を発した。
「あんた、長谷川さんの……オトコ? アキノ様~?」
はっとアキノが振り向いた。
ドガッ!