元いた場所にはすぐたどり着いた。
ただ、お母さんも、お父さんもいない。
車だけがぽつりと置いてあった。
車のトランクを覗いてみると、既に荷物は運び出されていた。
二人はもう中に入ったのだろう。
…そういえば―…
「さっきの男の子…」
『お気の毒に…』
あの言葉が脳内で何回も何回もループする。
背中に冷たいものが流れ落ちた。
遠目に墓があった場所をもう一度確認するが、そこにはもう男の子はいなかった。
わたしはその場に立ち尽くし、空を仰いだ。
穏やかな海の音、カモメの鳴き声だけが聴覚を支配する。
潮の香りと共に、冷たい風が駆け抜けた。