振り返りたくない気持ちと、早く顔を見たいという気持ちが混ざり、思わず立ち止まってしまう。


いきなり動かなくなってしまったあたしを、池谷くんはただ不思議そうに見ている。




「どうした、柚――?」



「せ、先生!おかえりなさい!」




池谷くんの言葉を遮って、後ろから聞こえてきた声の主――先生に笑顔で声を掛けた。



――咄嗟の判断だった。


池谷くんと一緒にいるところを、先生にだけは見られたくなかった。


“柚”って呼ばれていることを、先生にだけは知られたくなかった。


一緒に学校で勉強していることは、先生も知っていることなのに……なんで、こんなにも胸騒ぎが止まらないんだろう。




「先生は、どこに行ってたんですか?」



「ちょっとコンビニに」




いつも通りの無愛想フェイスで呟いた先生は、右手からコンビニの袋をぶら下げていた。




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