「ただ、勉強の仕方が分からなかったから、頑張り方が分からなかったってことだろ?」
なんだろう。今日の池谷くん、いつものような冷たい感じがしない。
言葉に表すのが少し難しいけど……なんだか態度が柔らかいっていうか、甘すぎるっていうか。
違和感を覚えながら、家路を急ぐ。
「ありがとう。けど池谷くん、もうすぐお家に着くから、もう着いてきてくれなくて大丈夫だよ?」
このままじゃ、ダメだ。
危険な香りがする、と脳がサインを出している。
笑顔を見せながら言葉を紡ぐと、当然ながら池谷くんは納得いっていない様子で。
「なんで?今日は送らせてくれるって言ったじゃん?」
「でも!池谷くんお家逆方向だし!遅くなっちゃうし!ね?」
そう宥めて、池谷くんの表情を再度伺おうとした、その時。
「帰ってたのか。おかえり」
突然、ゾクゾクと神経が蝕まれていくような低い声が、後ろから聞こえてきた。
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