そう言われて、断れなくなったあたしは、池谷くんに送ってもらうことになった。


別に、やましいことなんてないけど。


しいて言えば……池谷くんには秘密で、先生に勉強を教えてもらっていることが引っかかってしまうけど。




「柚ってさ、一緒に勉強する前はただのバカな子だと思ってた」



「……地味にグサッと来るからやめてよ」




事実だから、余計に悲しくなる。


ショックを隠せないあたしを無視して、池谷くんは話を続ける。




「だから、桐生先生に職員室に呼び出されたときは、正直マジかって思ってた。授業中でもうるさいヤツなんて、ロクなヤツがいないって思ってたから」



「誠に、申し訳ございませんでした……」



「でもさ、こうやって一緒に勉強してみると、柚って意外と真っ直ぐで、ちゃんと出来る子ってことを思い知らされた」



「え……?」




褒められると思っていなくて、あたしは咄嗟に池谷くんの顔を見てしまう。


池谷くんは、今まで見たこともないような、優しい笑みを浮かべていた。




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