少し涙目になりながらも、ガバッと勢いよく頭を下げて謝ると、池谷くんがまた笑い始める。
「何を気にしてんだよ柚。俺、別に気にしてないし」
「で、でも……」
「それに俺、今好きなヤツいるし」
「え……?」
その一言で、あたしは下げていた頭を上げてみる。
そこには、澄まし顔であたしのことを見ている池谷くんがいた。
「好きな人、いたんだね。その人に誤解されたりしないかな?」
「大丈夫だと思う。好きなヤツ、全然俺の恋心に気付いてくれないから」
そっか。あたしと同じで、片想いしているんだね。
池谷くんも同志ということで、少しだけ親近感が沸いたような気がした。
.