「いないよ、カノジョなんて」
「は……?」
放たれた単語に、思わず固まってしまう。
「だから、俺は付き合っている人なんていない。つまり、彼女なんていないから、怒る人もいないってこと」
その言葉に、あたしは非常にマズイことを言ってしまったことに気が付いた。
咄嗟に、口を手で覆う。
……あれだよね。
彼女いないこと気にしているかもしれないのに、勝手にいるって信じてたあたしって、空気読めてないよね。
あたしだって、彼氏いないけど!言っててむなしくなるけど!先生と付き合う気満々でいるけど!
それでも、あたしって池谷くんにヒドイこと聞いちゃった、よね……?
「ご、ごめん!あたしったら、池谷くんにヒドイこと言っちゃったかもしれない……!」
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