一瞬、自分でも何が起きたかわからなかった。

体がふわりと宙に浮きががり、高校生のもう一人の自分が見える。



「おい、あかり!おい!大丈夫か!?」

急に倒れた高校生のあたしになっちゃんとハル君が駆け寄る。
するとー


「…あれ?あたしなんで倒れてるの?」

「おまえ、大丈夫か!?顔面からいったぞ!」




よかった。『現在のあたし』が抜けても、大丈夫なんだ。高校生のあたしの意識に切り替わるのね、たぶん。
意識がなくなる、なんてことにならなくてよかった。

顔面は痛そうだけど。




さて、問題は、どうやったらまた高校生の体に戻れるか。



その後あたしは、部活中、帰宅中、自宅で、ずっといろんな事を試してみた。


高校生の自分の体をすり抜けてみたり、
無駄だとは思っても呼び掛けてみたり、念じてみたり、
ダメ元で自分にキスまでしてみた。


しかし、どれも駄目だった。


どうすればいいんだろう。

焦りともどかしさで、私は空中をゴロゴロ転がり、空を叩いた。



高校生のあたしはベッドに入り、今にも眠りに落ちそうだ。
自分のなにも知らない無邪気な寝顔を上から恨めしげに眺めていた時だった。


眠りに落ちた高校生のあたしの体に、すうっと引き込まれた。そしてそのまま体に溶けていくような錯角を覚えると同時に、あたしは深い眠りについた。