「アイツは自分の欲望のためだったら何だってする奴なんだ、そしてアイツは俺の母親を殺した」

今にでも全てを投げ出して父親を殺してしまいそうな勢いと殺気が仲西の周りを取り巻くように充満している。

「若い愛人が出来たアイツは、俺の母親が邪魔になったんだ、事故と見せかけて階段から突き落として俺の母親を…………………それから二年後、アイツは愛人と結婚したんだ、今や俺の母親気取りだよ」

仲西は少し笑ったが、それは楽しむような表情ではなく、冷たく刺すような表情だった。

「別に、お前が死ななくてもいいんじゃないか??親父を殺せばいいだけの話だろう」

俺は仲西に疑問を投げ掛けた。

仲西は柔らかくて悲しい表情で微笑んだ。

「俺には時間が無いんですよ、癌らしんですよね………身体中に移転しているらしくて」

俺は、珈琲を口に含みながら、再び話し出す仲西に眼を向けた。

「だから、自分の命を有効に使いたいんですよ。明日の昼頃、アイツはミドリ広場で演説をするんです、俺も応援役のためにステージに立つんです、その時に俺を殺して欲しい」

と仲西は俺に志願した。

「お前がステージに立つなら、お前の手で殺した方がいいんじゃないか??ほら、ドラマチックでインパクトがあるしな」

俺は笑いながら仲西に放った。

「SPがそこらじゅうにいますし、ボディーチェックもするので凶器を隠せないんですよ。その代わり、俺はアイツの悪行の数々を書いた手紙を市民の前で読んでやるんですよ、応援の演説の紙と偽れば大丈夫ですし、そこであなたが俺を殺せば、アイツが雇った殺し屋か何かと市民は勘ぐりだすでしょう」

と仲西は冷めた口調で語った。