日差しがやけに強い公園のベンチに腰を降ろし、前方の芝生に目を向けると、親子連れがゴム製のボールで遊んでいる。

跳ねながら芝生に転がるゴム製のボールを子供が楽しそうに追いかけている。

これが、世間的には幸せの形なのだろうなと思いながら俺は親子連れの幸せな時間を冷めた缶コーヒーを口に含みながら眺めていた。

すると、コートのポケットが妙に騒がしく震えていることに気づいた。
左手をコートのポケットに突っ込み、騒がしく震える携帯を取り出した。

携帯のディスプレイに目を向けると知らない番号が並んでいた。

その番号の発信者とは誰かは予想がつく、俺に依頼を頼む者だろう。

俺は常に携帯を二台持っている、一つは通常の携帯でそして、もう一つは仕事用の携帯だ。
今、左手の震えている携帯は仕事用の携帯だ。

相手を受け入れるためのボタンを押して携帯を耳に近づけた。

俺の中で一つだけルールが存在している、依頼人が依頼の条件と目的と報酬額を口にするまでは俺は喋らないということだ。
意味は特に無い、まぁスタイルというか個性みたいなものだ。

すると、若者と思われる声が携帯から聞こえた。

｢仲西雄大です、殺しの依頼を頼みたい、報酬額は三百万で、殺して欲しい相手は…………………仲西雄大。『俺を殺してくれないか??』」

携帯から聞こえてくる相手が何を考えているのか、俺には分からなかった。

｢自殺したいなら自分で首を吊るなり、飛び降りるなりしろ、俺は自殺を手伝う仕事はしていない」

すると報酬額を五百万に上げてきたのだ。

｢俺は自分で死ぬことが出来ないんです。お願いです、俺を殺してください。」

｢何故、お前は自分で死ぬことが出来ない??」