「あ……あの……」

「……」

「えと、だから」

「……」

「ん〜、あ〜、その、あれだ」

「……」

目の前には、ヤンキー座りしてタバコを吹かす学ランがいて。

突っ立ったまま吃る私を睨みつけるように見上げてる。

「えと……だな」

「……」

──やばい。

冬だと言うのに、額からは尋常じゃない汗が噴き出し始めている。

そもそも、私、こんなキャラじゃないじゃん。

おかしいよ。

おかしいって。

ここはまず、このおかしな汗を気づかれる前に退散するのが正解かもしれない。

それで、計画を練り直し、日を改めて……って!

だから、計画立てるとか、そんなキャラじゃないっつーの。

ややや、やっぱ、ここはごくごく普通に自然に、余っちゃたからさ〜ぐらいな雰囲気で……。

てか、何がどこでどうなったら、こんなハートマークオンパレードのピンク色した包装紙に包まれた可愛らしいチョコが余ってくれちゃうんだよ?

有り得ないって。

やっぱダメだ。

これ以上汗が噴き出したら完璧怪し過ぎるだろ。

「や、やっぱ、な、何でもないである」

やばい。

日本語もおかしな事になってきた。

滝になり始めた汗を片腕でグイッと拭うと

「そ、そんじゃっ」

私はクルッと向きを変えて、右手右足を同時に前に出した。

「ねぇ、それ、いつくれんの?」

は……い?

“それ”?

右手右足からの明らかにおかしなスタートをきろうとしていた私は、学ランの問い掛けに体を固め。

カキンコキンと聞こえてきそうなほど滑りの悪くなった首を回して、振り返る。