私と弘輝では何もかもが違った。バスケ部のエースで顔も整っていて明るく笑顔が爽やかな一言で言えば人気者の弘輝。帰宅部で顔も性格も普通でどちらかというと地味な存在の私。こんな私達が恋人になれたのはもしかしたら奇跡だったのかもね。

私は数学が苦手だ。苦手という言葉ではまだ足りないか。20点、30点は当たり前。むしろそれだけとれたら私の中では花丸をつけたいくらいだ。小学生の時から何故か数学だけは嫌いでいつも追試試験を受けていたのだ。

でも私と弘輝をつないでくれたのは私の苦手な数学の追試試験だった。初めて言葉を交わしたのは6月の憂鬱な雨の日。弘輝はまぁまぁ勉強ができるから追試なんて受けなくて良かったんだけど友達が多い彼のこと、放課後になってもバスケ仲間や先輩にいつも囲まれていた。

「頑張りなよ〜」
「あ〜あ。面倒くさいな」
友達の美奈未といつものように軽く会話をしていた。美奈未はクラスで1番、学年で5番目に頭が良い子で今では弁護士の卵。そんな友達をもてたことが私はいつも誇りに思う。勉強が出来るだけじゃなく女からみても大人の良い女だから。最近はお互い忙しくて連絡もとってない。会いたいなぁ。

追試試験がある教室にはいかにもおバカそうな男子や見た目が派手な女の子ばかりがぞろっと集合していた。その中に私が入ると自分は米つぶみたいな気がした。小さくて目立たない存在。ガヤガヤしていて落ち着かなくて俯くしかなかった。そんな時私に近づいてきた人物がいた。

「同じクラスだよね?」

それが弘輝の第一声。