初恋ではなかった。小学生のとき研修でやってきた大人の男の先生に恋をしたのが初恋だ。それから私は男という生き物を意識してみるようになった。研修の先生には何とも言えない男の色気があって幼いながら私は言葉を交わすたびにドキドキしていたのだ。彼、弘輝にもいくつか似たところがあった。少し中性的な顔だちや犬のような人懐こさ。高校では幸い同じクラスになれた。私は飛んで喜んだ。嬉しくて嬉しくて夢じゃないかと顔をつねって周りから冷めた目でみられたりしたけど、そんなのどうだって良かった。神様は絶対にいる、そのときそう確信した。弘輝と私の席はとても離れていた。名字が原因。弘輝ははじめのほう、私は終わりのほうだからだ。何か話しかけるキッカケはないかと良いタイミングを探した。でもそう簡単に神様は微笑んではくれなかったのだ。