それからというもの私はいつも上の空だった。勉強しなければ彼が行くと言っていた船山高校には行けない。だから勉強しようと机に向かうのにダメだった。一人の時間はほとんど彼で埋め尽くされていた。正直に言うと学校でもそんな状態だった。こんなこともあった。美術の時間。「みんなの大切な人の絵を自由に描いてください」と先生が言ったので私は少しの躊躇いもなく彼を描いたのだ。シュートをきめたときのカッコイイ彼を。周りのみんなは家族や友達を描いているのに私は悪い目立ちかたをしていた。それでも先生は素晴らしいと誉めてくれたっけ。その後は友達から質問攻め状態。「あれは理想の王子様?」だとか「夢でみた相手でしょ?」なんてバカにされた。それでもそんなこと気にならなかった。好きで好きでどうしようもないのに彼のことを何も知らない辛さに比べたらどうってことなかった。そんな毎日を繰り返して寒く厳しい冬がきて受験にうかり暖かい春になったのだ。