忘れない内にと矢継ぎ早にその気持ちを打ち明けた。

「理解者がいないっていうのは辛かったわね。」

幼子を慈しむ様にそう言うと、彼女はモニターを消し部屋に明りを戻した。

「でも今の話しで私達の仮説がだいぶ絞られてきたわ、目を覚ましたあなたの人格につい

てはいろいろと議論が成されたの。面白くもなんともないものから荒唐無稽なものまでい

くつもいくつも‥‥。今の所もっとも理想的な状況だわ。まだ油断はできないけれど現段

階で異常は、あなたにも起きていない様だし。」

「僕の人格についての仮説?って。」

「そうよ。『肉体的存在と意識としての存在の特異検証』そして『人格の補完と多元性に

ついて』まだまだ課題はたくさんあるわよ。」

意味ありげに微笑みながら彼女が言う。

「どうやら昔を懐かしんでいる場合じゃ無いようだね。」

「そうよ、今のあなたの存在が大切なの。そしてとても危ういわ。」

彼女の目が今を引き戻した。

「どう?私の予想だとあなたは、そろそろ外に出たいとウズウズしている確率が高いんだ

けど。」

口癖を真似られて少し照れる。

「外に出ても大丈夫なの?」

「あなたがその好奇心を押さえられるのなら、ず~っとここにいて私の事見ててもいいけ

どぉ。」

彼女は意地悪くそして悪戯っぽく言う。

「い、いや‥‥。」

「あはは照れてる冗談よ。」

「いや、そうじゃなくてさっき外の世界を見せてもらった時も言ったと思うんだけど、い

くつかの事にある程度見通しは、ついたけれど確証を得る為にはやはり実際に‥‥」

「何よ!私と一緒にいるのが不満だっていうの!」

この場合いやはり『君とここにいたい』と言った方が確率的によかったのか?と思案する

が、様子をみる。