ビルとビルの間にもまた透明なチューブは行き交い、そこから幹線道路にスムーズにカプ

セルが流れ込む様子は、いつまで見ていても飽きない。

窓の外に広がる世界は、まるで20世紀の子供達が図鑑を見て夢想した21世紀の世界。

平静を装うが、心の高ぶりを抑えられない。

きっと今僕は、新しいおもちゃを手に入れた子供の様な顔をしているのだろう。

急に気恥ずかしくなりそれを気とられない様に精一杯冷静に言う。

「良い物を見せてくれてありがとう。これでいくつかの事にある程度の見通しが付きまし

た。ただ‥‥。」

「ただ?」

不安気な顔をする僕を彼女もまた不安気に見る。

「ただ、あなたの事をなんと呼んだらいいのかは解らないのです。」

ほんのわずかに間をあけて、彼女の笑い声が響く。

「アハハ、おっかしい、これだもの、これだからあんな事思い付くんだよね。あー変な

の、おっかしい。」

大変失礼な事を言われているようだが、彼女の笑い声がなんだかうれしかった。

笑い続ける彼女が、指を3回弾く。

一瞬にして部屋が真っ暗闇になる。

突然宇宙に放り出されたような感覚に陥り、軽い目眩に襲われる。