「そうだったね緊急時だったから…申し訳ない…」と

短くそして語尾を力なく消え失せさせた。

「で?どうだったの?私は?」

艶やかな瞳を輝かせながら伏し目がちな私に問いかける。

「どうだったって?」

劣勢にまわった縄張り争いをする猫の様に決して目を遇わさずに答えなんとか次の言葉から逃れようと惚ける。

「とぼけないでよ?」

少し語気は強くなったものの怒っている感じではない。むしろ語尾の疑問符はアクセントと言い目付きと言い可愛らしくも美しくそして何より妖艶だった。
私はなおも沈黙を守る。
だが極自然な風を装って聞こえない振りをする私を彼女は許す気はない様だ。
「きれいだった?」
「魅力的だった?」

と続け様に問いかけて来る。
その手には乗らないぞと言い聞かせ、ことさら具合が悪そうに背中を向けた。