「まさかとは思うけど…あなたも何かを追いかけてここまで来たの?」


「ああ、そうだけど。あなたもって?ミューも何か追いかけて来たみたいな言い方だな?何を追いかけて来たんだ?」


「私の事はどうだっていいでしょ…それにどうせ信じるわけないし…」


「奇遇だね、俺もちょっと信じられないものを追いかけてたんだけどね!」


「またふざけて…」

ミューがあきれ顔で言う。
「ふざけてなんかないよ!悪ふざけで冬の海に飛び込むほど酔狂じゃないさ。ミューはイルカでも追いかけてて来たの?」


「あのね?私が燃料無くなるまでイルカ追いかけるほどお馬鹿さんだと思ってた訳?」


「じゃあ何を追いかけて来たんだよ?」


「あなたこそ何を追いかけて来たの?振り返す様だけど真冬の海に飛び込むんだからよっぽどの物だよね?何なの?絶世の美女?それとも大金?またふざけて想い出とか言わないでよね?」

ミュ自分から質問を遠ざける様にミューが捲し立てる。


「想い出かぁ…想い出と言えなくもないな…ミューは詩人だね。」


「またそうやってはぐらかす!」


「いや、はぐらかしてなんかないよ…言い得て妙だよ…正確に言ったら想い出にしたくないから追いかけてたんだけどね…」


私がそう言うとミューがハッとした様な顔をした。

そして…

「ねぇ…もしかしたら私達…」

そう言いかけて口をつぐんだ。