「なぁミュー…」

「なあに?」

「お前さっき俺の事ひっぱたいたよな?」

「だって…変な事言うから…」

ミューが伏し目勝ちに言う。

「俺は痛かったぞ…」

「そりゃあ痛かったでしょうよ…思いっきりひっぱたいたもん…ごめん…それで怒ってるの?」

ミューの質問には応えず私は更に問いかける。

「俺は痛がってたよな?」
「何おかしな事言ってんの?痛がってたわよ…」

「よし!これは夢じゃない!」

「はぁ?何言ってんの?今さら…」

あきれた顔でミューが言う。

「夢じゃないって事はだ!」

「なに…よ?」

「夢じゃないって事は頑張ればなんとかなる!」

「はぁ~?普通逆じゃない?」

「いや…俺の経験上、夢が自分に都合良く運ぶ事はまずない。」

「あたしはあるけど?」

自信満々に言うがあっさり否定される。

「いや…確率の問題だよミュー!いつも自分の都合良くはいかないだろう?」

「そりゃまぁ…そうだけど…」

ミューがいぶかしげに答える。

「そりゃあそうだよな!もし夢でなんでも自分の思い通りになるんなら…人は…寝てばかりになっちまうからね!」

「はぁ?」

「つまり眠りの中で見る夢がままならないから人は現実の世界であがき、夢を叶えようとするんだ!」

「……」

もはやミューはあきれてものも言わない。

「故にこれが夢でなく現実であるならばなんとかなる!なんとかなるさ!ミュー!」

「それって逆説的な捉え方もあると思うけど…」

「いやいや!逆の逆もまた真なりだよ!」

「なんか…ちょっと意味違う気もする…けど?」

「ミュー!信じる者は救われる。だ!俺はこの夢の様な状態を夢で終わらせず現実に引き戻すんだ!何がなんでも!」

「この状態のどこが夢の様なのよ?」

「何であれミューがいるだろ?でもこのままじゃあ確実に美しいミューを失ってしまうからな!」

「またそんな調子の良い事言って…事態がまだわかってないみたいね?」