「了解しました、テンチョー店長。松坂呂洲、床磨きに入ります!」


 ロースは小さい身体を目一杯伸ばしてビシッと敬礼し、再び床磨きに戻った。

ひたすら同じ場所をゴシゴシゴシゴシ。

いや、正確にはゴォシゴォシゴォシゴォシくらいだ。

ロースの動きは牧草を食べる牛ぐらい遅い。

ゴォシゴォシゴォシゴォシ。


「おいちょっと、待て待て。はいよ、了解。よろしくねーとか言うと思った? 言うわけないよな。俺ちゃんと伝えたよな、皿を磨けって。なんで床磨いてんだよ」


「床が汚れてたからね。すいません、僕なんかが床磨いちゃって」


「いやいや、悪いね、床磨きさせちゃってーとか言うと思った? 床が汚れてたんなら確かにしかたないかもしれないけどさ、俺は皿を磨いて欲しかったんだよ。でも、この床そんなに汚れてたか? さっき掃除したはずなんだけどな」