ロースは電卓を探し出して、慌てて計算した。1億円って、どれくらいすごいんだ。

牛乳が1本100円で、1日あたり20本だから、2000円。1億円あるってことは……。


「ご、5万日分!?」


 一生牛乳を飲める金額を手にしたロースは、牛柄の着せ替えケータイでいつもの店に電話をした。


「……あ、すいません、松坂です。いつもお世話になっております。あのですね、配達してもらう牛乳の本数を増やしてもらおうかと思いまして。はい、すいません、毎日30本お願いします。はい、あ、お金は前払いで1年分すぐに払います。すいません、失礼します」


 牛乳配達店への電話はこれでOK。あとはプロテインだ。ロースは窓の方を見た。

練乳味のプロテインが、窓を覆い隠すようにピラミッドを作っていた。うん、プロテインは問題なし。


 そこで、ロースはある事実に気付いてしまった。働かなくても牛乳とプロテインは手に入る。

もうバイトなんかする必要はないのだ。

ロースは牛柄のパジャマを脱ぎ捨て、牛柄のロングTシャツにオーバーオール、牛柄のコートという服装で家を出た。