「ちょっとちょっと、テンチョー店長。簡単に騙されすぎだよォ。アハハ」


「バカ野郎、俺は騙されねえよ。詐欺師にだって騙されたことないんだからな。ところでモテぬ男、おまえなにしに来たんだ? たしかシフト入ってなかっただろ」


「ちょっとちょっと、テンチョー店長。モテにきたに決まってるじゃないかァ。アハハ」


「モテにきたってなんだよ。どうせ来たんなら仕事していけ。そうだ、変人同士ちょうどいいから、新人に仕事教えてやれよ」


「すいません、僕は変人じゃないです。ただ牛乳が好きで、ステーキを見ると吐いちゃうだけです」


「まあ牛乳が好きなだけなら問題ないんだけどな。それ以外のところに問題があるよな」


「ちょっとちょっと、ロースくん。ステーキ見ると吐いちゃうってなんだァい? アハハ」


 サッ。バッ。

モテぬ男は素早い動きでパソコンの横に立てかけてあったメニュー表を取り出し、「素敵ステーキ」の写真をロースに見せた。


「すいません、言葉の通りで……ゲロゲロゲロゲロ」


「写真でも吐いちゃうのかよ! もう二人とも店長室の床磨いたら帰れ!」