バタン！

そのとき、店長室のドアが華麗に開け放たれた。

「ステーキのステキ」の従業員、桜庭博文(サクラバ　ヒロブミ)がブロンドの髪をさらりとかき上げながら、“サーフィンのあとシャワーを浴びている男前”を演じていた。

黄色いタンクトップに白いジャケット、ヘビ柄のド派手なズボン。

よく見ると、どれもシミだらけだ。

キラーン！　と擬音が聞こえてきそうなほど見せつけている歯は、見事なまでに黄ばんでいる。


「ちょっとちょっと、テンチョー店長。なに興奮してるんだァい？　アハハ」


「誰がテンチョー店長だ！　勝手に入ってくんじゃねえよ！　これ以上めんどくさいヤツの相手なんかしてられっか！」


「ちょっとちょっと、テンチョー店長。入ってきたのはめんどくさいヤツじゃなくて、モテすぎるヤツじゃなァい？　アハハ」


「うるせえよ、モテぬ男！　おまえがモテてるところなんか、一度も見たことねえぞ！」