「やっば。何この桜。ハンパなくでかくね??」
佐々木亜莉紗が金色の髪をかき上げ、桜の樹を見上げた。
「うん。やばいね…。こんなの、見たことないやぁ」
そう、見たことない。
あの樹が初めてなんだよ。樹にうっとりとしたことなんて、一度もない。
あの桜の樹が初めてなんだ。
「もう中学も終わったんだね」
亜莉紗が卒業証書が入っている筒を見つめた。
「終わったんだねー。あーっとゆう間だったじゃん」
「だね」
あたしは桜の樹の下にしゃがみ込んだ。
長い長いと毎日嘆いていた中学生活とも、もうお別れかあ。
「てかぁ、晴乃は高校なったら髪の色落とす??」
その時のあたしの髪色は、亜莉紗まではいかないけれど金に近いギリチャッパという所だった。
「んー。めんどくさいなあ。亜莉紗はあ??」
「あたし??あたしが落とすとでも思ってるンスかあ~??桃田さぁ~ん??」
亜莉紗が腰に手をあてて、あたしを見下ろした。
「ははは(笑)全然思わない。てか、思えないよぉ」
「だーよね。さっすが親友♪高校なったら赤にでも染めるかなあ」
「マジ??」
「マジマジ。ンで、原チャも新しいの欲しいし~」
「亜莉紗、また新しい原チャ買うの??前、買ったばっかじゃん!!!」