「優衣…あまり思い出したくないかもしれないけど…その…三澤は…」

俺はゆっくり言った。

「首が…まわってた?」

この言葉に優衣はビクッとしたようだが、声を静めて答えた。

「…うん…」

「…今、どこにいるの?」

「私の家…け…警察の人にも…言って…でも怖くて、私…」

「…うん。しばらくそこでじっとしてて。…すぐに終わらせるから」

「え…?」



俺は電話を切ると、震える手で膝を抱えながら、机を向きあった。

俺は意を決した目で人形を見る。

目の前の片腕の人形をつかみ取り、力強く握った。

「お前なんか…燃やしてやる!」

俺の目は怒りと悲しみで涙がたまっていた。


俺は急いで一階に降りて行った。

ドンドン音が鳴って、母親がどなりに来るか心配だったが、幸いなことに母はいなかった。

父の部屋に入り、煙草の近くのライターを手にとる。

さらに大股で台所に駆けつけると、洗面台の上でライターをつけた。

オレンジ色の炎がゆらゆらと揺れている。

「…もうこれで最後だ」

俺はためらうことなく片腕の人形に火をつけ、洗面台の上に人形を投げ捨てた。

片腕の人形はすぐに火がまわり、全身が燃えだす。

「これで、おわりだ…これで…」

俺はしばらく揺れる炎を見ていたが、優衣のことを思いだし、携帯を手にとった。

俺は自分の部屋に戻ろうと廊下に出て、

歩きながらすぐに優衣に電話をかけた。

「………もしもし…荒崎くん?」

今回は数コールで優衣はでた。

「優衣…その…大丈夫か?」

「…さっき聞いたばかりじゃない…」

「あ…ごめん」

「……」

まだ、すすり泣く音が聞こえた。ひどいショックを受けてる。

「あのさ…」

「荒崎くんは…平気なの…?」

「え…?」

「真由美ちゃんが死んじゃったんだよ!?どうして平気でいられるの!?ねぇ!?」

「…信じられない…し…」

「でも、死んじゃってるんだよ!どうして…どうして…」

優衣の声はかれていた。

「死んじゃったのに…平気なの…!?」