「ううん」

優衣は心苦しそうに言った。

「荒崎君、謝らないで。こっちが苦しくなるよ」

「あ…悪い」

「えっと…私から、健志君にメールしてみたけどね。返信来ないの」

「本当に?」

「うん」

やっぱり…。

「電話は…?」

「してみたけど…駄目だった」

健志…どうしたんだ。

「そう…か」

「健志君…大丈夫かな…?」

「た…多分、出かけてんじゃないか?携帯忘れてんだよ」

「そう…かな」

「ああ、きっとそうだよ」

俺は苦笑しながら言った。

「よく考えれば、メールこないから何かあたってのは、おかしいじゃん!」

「うん…そうだよね…大丈夫だよね」

優衣は徐々に声が高くなった。

「健志君、きっと連絡くれるよね」

「ああ」

「…ありがと、荒崎君」

「いやいや」

そのあと、俺らは挨拶の言葉を交えて、通話を切った。

「…」

俺はドアノブに手をかけて、外に出た。


外に出た後、俺は足早に健志の家に向かった。

さっきはあんなこと言ったが、健志が出かけるのに携帯を忘れるなんて確率はかなり低い。

「本当になにかあったのか…」

俺は少し困惑した顔で横断歩道を渡った。