琴音は、一番上に「Soothe 収支表」と打ち込むと、一気に作業を進めた。



「琴音ちゃん、さすがだね。これで、今日までの収支が分かったよ」

「残額、57920000円ですね・・・でも、やっぱりホストクラブですね。お酒の購入量が半端じゃないですよね」

「そうだね。うちは、ワインだと『ボジョレー・ヌーボー』、シャンパンだと『ドン・ペリニヨン』、俗に言う『ドンペリ』・・・だいたいそういうお酒がほとんどかな」

「それと、お酒を注文したお客さんがいたら、その時はいつも、悠治さんが乾杯の音頭をとるんだよ。ホストの世界も、上下関係は厳しいんだ」

「そうなんですか・・・あれー、竜哉さん?今、ちょっと嫌そうな感じじゃなかったですか?」

「い、いや、違うよ!?悠治さん、誤解ですよ!?」


「竜哉、今日はもう帰っていいよ」

「えぇー!!」



琴音は、共に笑いながら、自然と暖かい気持ちになってゆくのを感じた。




本当に、今までのことが夢のようでならなかった。

見ず知らずの自分に、まるで昔からの知り合いのように接し、もう1つの居場所を作ってくれた。


単に「かわいいから」「とりあえず」といういい加減な考えではなく、自分を「一人の人間」として見てくれた悠治達。


琴音は、彼ら一人一人の手を握って、感謝の意を伝えたかった。


琴音は、ハッとして、純白のスカートのポケットに手をやった。

「悠治さん、すみません。両親からの手紙を預かって来てたんです」

「律儀な人だね、わざわざ手紙だなんて・・・じゃあ、読んでみて」


琴音は封筒から手紙を出すと、ゆっくり読み始めた。