悠治のスポーツカーは、初夏の風をきって、軽快に走ってゆく。

「気持ちいいんですね!スポーツカーって!初めてなんです、乗るの」
「本当?まぁ、楽しんで貰って嬉しいけど、あと何年かしたら、琴音ちゃんも、自分の車持つようになるんだろうね」
「そうですね。・・・免許取れたら、ですけど・・・」
「琴音ちゃんならできるって。お・つ・む・は、大丈夫なんでしょ?」
「やーめて下さいよー、もうー」



「あ、そうそう。琴音ちゃん、これ」
「・・・悠治さん、これって・・・!」

悠治が琴音に手渡したのは、銀色に輝く半仮面。ちょうど、縁日のお面のように、目と口の位置に穴があいている。


「いつもその布じゃあ、周りが気になるでしょ?そのお面なら、少しお洒落に見えると思うよ」
「素敵です!嬉しい!・・・本当にすみません。いろいろ心配して頂いて・・・」

「そんなこと・・・これも何かの縁だよ。それに、俺達が琴音ちゃんを見つけなかったら、君はずっと苦しみ続けていただろうしさ・・・」



陽が少し、西に傾きかけた頃、悠治の車は「Soothe」の駐車場に着いた。


「あ、悠治さん。ちょうど今、エクセルのインストール終わったところです。・・・琴音ちゃん、今日からよろしくね」
「ありがとうございます。エクセルがあれば、百人力ですよ」


琴音は、さっそくエクセルを立ちあげると、帳簿を作り始めた。