二人は、放課後の屋上にいた。燈哉のピッキングで開けられたままの屋上で、天音沢がゆいを呼びつけたのである。

天音沢は、自分の首の高さまである柵に背伸びで腕を乗せ、その腕に顎を乗せた。背が足りてないので、空を見上げさせられているような格好。

「なんにせよ、今回のお勤めご苦労様です。花班班長の僕からも、お礼を言っておきます」

「別に例なんかいいわ。それよりテスト勉強があるから帰ってもいい?」

木霊の四辻が消滅した今、生徒の気持ちはいよいよ目の前の期末試験に向き始めた。ゆいも燈哉も、例外ではない。もちろん天音沢も。

「連れないなあ。あのですね宮部さん。今回の案件は、アナタの試験もかねていたんですよ?」

「試験?」

「はい。中級部隊である月班への特別編入試験。僕が月班の班長に強く推しまして。で、推薦にあたって、木霊の四辻をアナタとその式神、千里ヶ崎燈哉と二人で解決するという課題にしました。アナタは見事、やってのけた。幻想の皮を被った現実を、白日のもとに晒した。いやあ、アナタの掲げるリアリズムを見せてもらいましたよ。文句なしの合格。だから月班編入ってわけです」

「……あんまり興味ないんだけどなあ……」